桂島緑地

一枚の葉だけに目を向ければ、緑色から黄色へ、そして橙色から赤色へと変化していくことは、時間をかけて、少し長い目で見なければわからない。

緑の葉と、紅葉が進んでいる葉との、この混在感がなんともいい感じである。紅葉する時期は少し違っても、焦ることはない。いつかは紅葉して、その時に人を楽しませてくれるものだ。

場所によっては、緑色の苔が、赤く紅葉した葉を際立たせることもある。この時期、自分にも目を向けて、と言っているかもしれない。秋は少しずつ深まっている。

思うに、このベンチは、まさに季節の変化を見るためのベンチではないだろうか。目の前の木の葉が、季節によってどんどん変化していく、その姿を身近に、手に触れるように見ることが出来る、いわば特等席なのだ。

ついこの間までは、緑陰の中で暑さをしのいだりしたのだが、今では、色付き始めた葉が、所々で見られるようになった。どんなに暑い夏でも、必ず秋になる、ということか。

「歩きの人はどうぞ。自動車は入れませんよ」横断歩道を渡ったその先は、桂島緑地の並木道の入り口で、数本の車止めが門番のように立っている。まっすぐにすっと立っているその姿からは、こんな言葉が聞こえてくるようだ。

写真を撮っているちょうどその時、一匹のトンボが飛んできた。水飲み場でちょっと小休止かな。